ナチュラルランニングの講習に参加してわかった遥かなる道のり


吉野剛×高岡尚司のナチュラルランニング全国ツアー【in愛媛】に参加

5/9に北条スポーツセンターで行われたナチュラルランニングツアーに参加してきた。日本ベアフットランニング協会代表の吉野さんは、1年前にも松山にいらして裸足ランニングの講義をされており、その場に自分も参加した。

今回は、裸足でのマラソン日本記録保持者である高岡さんも訪松してのダブルセミナーであり、子供と一緒に参加できる「親子かけっこ教室」もあるので楽しみにしていた。

このイベントはT.mountainの菅野さんが、今回のツアーに際し愛媛での開催を企画してくれて実現されたものだ。こういった顔の広い人が近くにいるのは本当にありがたいことだなぁと思う。

当日は、よもやの雨で中止と思いきや、小雨の中で開催した。当日キャンセルが多かったようで、少人数ではあったが、その分講師との距離感も近く濃い内容だった。

会場の北条スポーツセンターのグラウンドは、ふかふかの天然芝で本当に気持ちが良かった。天然芝でこれほどの密度で生えているグラウンドは人生初の経験だ。

親子かけっこ教室(吉野さん)

午前中は吉野さんの親子かけっこ講義。希望者のみ裸足になった(うちは親子含めて裸足で参戦)。

吉野さんの裸足ランのトレーニングは、重心移動やジャンプの反力を活かす身体の使い方を親子でペアになって一緒にやっていく形で進んだ。

長男は日頃からよくピョンピョン跳ねているので裸足ランにぴったりかな?と思って参加させてみたが、案の定よく跳ねており推測は正しいことを実感した。

次男はそこまで動きは激しくないのだが、膝を使った着地の衝撃吸収がうまくて吉野さんに褒められていたのが印象的だった。

で、父親は…というと、以前裸足ランニングの講義を受けたにも関わらず、いろいろできていない部分がありちょっと反省。。。薄底靴やワラジで走ってるだけじゃダメだったみたい。

約1時間半、休憩もいれつつ、しっかりと親子で身体を動かして裸足で走れた。後半は子どもたちはバテ気味だったが、最後の鬼ごっこでは大人も子供も混じって沢山走り回ってフィニッシュとなった。

親子ペアでできる様々なドリルを教わったので、今後も子どもたちと楽しみながら実践していきたい。

エコノミカルランニング(高岡さん)

午後は高岡さんのエコノミカルランニングの講義に参加した。午前の雨模様とはうって変わり、快晴になったので芝の緑が眩しかった。

最初は主に上半身の柔軟性、使い方、鍛え方の講義をうけた。これらのドリルはじつに地味だが、普段使っていない部分を使うのでかなり辛かった。例えばブリッジをやったのだが、踵をつけたままで手をついて身体全体を持ち上げる形のブリッジは、踵をあげて首で支えるレスリング的ブリッジよりも背中がキツい。

あと苦戦したのがカエル跳び。動画では講師の高岡さんが軽々とやってるけど、こんなに軽々と綺麗になんてできずない。もっとドタバタして潰れそうなカエルみたいになる。なぜ綺麗にできないのか?どうも身体をうまく使えてないからだろうなぁ。見本を見せてもらっても、うまくできないもどかしさ。あー、じれったい。

後半は、上半身・下半身を連動させて徐々に走り方に応用するドリルを繰り返していった。

最後はトラックを裸足で走る5000mタイム測定を行った。目標タイムとかはまったく考えていなかったので、その日学んだことを意識しながら丁寧に走ることにして22分30秒くらいだった(トップの方たちには2周差をつけられた)。これまでアスファルトを部分的に裸足で走ったことはあったが、アスファルトではないにせよ裸足で5km走りづつけるというよい体験をさせてもらった。

40歳過ぎて、こんな本格的なトラックを5000mも走り、タイム計測するなんて、5年前には夢にも思わなかったなぁ。

感想

エコノミカルランニングの講習を受けてみて感じたのは、ゆる体操で有名な高岡英夫氏の身体操作に近いのではないかということだ。(といっても高岡氏の身体操作は書籍でしかかじっていないので断定はできないのだが)

四足歩行の身体の動きを意識させそれを二足歩行、二足走行につなげていたのが非常に興味深かったし、股関節からではなく上半身から足の延長として意識する、という部分も似ていたように感じる。

後日談になるが、翌日から背中、肩甲骨回り、体側、足の付け根に結構な筋肉痛が残っていた。特にカエル跳びのやりすぎ(?)で腿の付け根(腸腰筋)が筋肉痛になり、足を上げるたびに痛いのは参った(車のフットブレーキを踏むのがきついくらい)。ここの筋肉は長距離走を行う上で重要なので、今後はカエル跳びで鍛えることにしようかな。

当日のレポートは以下で詳しくみることができる。

ヒトが本来もつ機能を再び使いこなす

吉野さんの裸足ランのドリルも、高岡さんのエコノミカルランニングも、元々人間の身体がもっているが今は使っていない機能を再び使おうという流れに位置する。

もちろん、人は裸足ではなく靴を履いて走るし、上半身をうまく連動させなくても走ることは出来る。裸足でのトレーニングをしなくても早く走れる人は沢山いるし、裸足のトレーニングをしたからといって必ず早く走れるというものでもない。

しかし、本来体が持っている機能を、単に使わないだけでなく、本来の機能を使わず別の何かに頼った結果として新たな問題が生じたり、その問題を解決するためにまた別の何かに頼り、更に新たな問題が生じる、という悪循環が発生するのはどうかと思う。

その例が、世界的に話題になった書籍「BORN TO RUN」で言うところの「靴底のクッションが生まれたことによって、本来の体の使い方ができなくなり、その結果、怪我が増え、ますます足を保護する方向に向う」ことや「様々な要因で人が身体を動かさなくなり、その結果として、肥満や生活習慣病が生じ、それらを解決するために多くの薬が投与される状況」などに向うのだろう。

このあたりは、色々考え方があり、「人が(道具を使うこと・ライフスタイルの変化により)退化している現実を受入れて、その現実にあった対応(新しい道具を発明して利用する)をするのがよい」という意見もある。

どちらを選ぶかはその人次第であるし、既に問題を抱えている人には、まずは問題を解決してくれる何かが必要だ。しかしそもそもその問題はどうして起るのか?という問い立てがないと、次々と新しく生まれる問題に対して尽きることのない努力を強いられてしまうことも事実だ。(企業にとっては、ここがビジネスチャンスなので喜ばしいことかもしれないけど、個人にとって本来それでよいのかは別問題だ)

身体感覚を取り戻すことの意味

自分は「BORN TO RUN」を通じて、こういった課題意識を持つようになり、様々な試行をおこなっているが、その度に痛感するのは、これまで本来持つ機能を使っていないがゆえに、身体を思い通りに動かすことができないということだ。

しかし別の見方をすれば、人が本来持っている機能を使うことを意識して、少しづつ取り組むことで、誰でも思い通りに身体を動かすことができる可能性を秘めているとも言える。その身体感覚を取り戻す過程を経験することで、人は多くの気づき・達成感・喜びを手に入れることができることを実感している。

同じようなことは、最近出版された「GO WILD」でも言われている。

無から有を、どんどん新しい何かを生み出したり手に入れる必要なんてないのかもしれない。今ここにある自分の身体と正面から向き合うだけで、こんなにも多くのものを得ることができるのだから。

自分のこれまでの2012年からの数年間は、40年間かかってコチコチに固まりブクブクと膨れあがった身体を、走ることをきっかけに少しづつほぐしながらきたつもりだった。しかし今回のセミナーで、先はま〜だま〜だ長いことを改めて痛感したし、まだまだ楽しめそうだという期待も膨らんだ。

これは自分を題材にした人体実験であり身体ハックだ。少しづつの変化に出会うこと、そして行為そのものが楽しいと感じるから続けることできる。引き続き身体ハックをしていきたい。

まずは、綺麗なカエル跳びをできるようにしようっと。

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