パーマカルチャーデザイン奮戦記・後編

はじめに

以下の記事は、2014年4月にパーマカルチャー関西のメルマガに寄稿した記事を元に、加筆修正したものです。 対象読者はパーマカルチャー関西のデザインコース、実習コースの卒業生を想定しており、パーマカルチャーについての基礎知識はあるものとしています。

積層マルチ

PCKデザインコース五期(2011年)卒業の愛媛在住の懸田(かけだ)です。私の試行錯誤のお話を引き続きご紹介します。

私のデザインの対象は自宅の庭です。次に行なったのは、パーマカルチャーで有名な実践である「積層マルチ」です。地面に炭素の層と、窒素の層を交互に重ねてマルチを積み重ねていくことで、雑草を抑制し、乾燥を防ぎつつ、肥沃な土壌への遷移を促進させる、パーマカルチャーらしい複数の機能を併わせ持つ優れたアイデアです。実際に積層マルチを行い、確かに、雑草を一年ほどは抑えながら、湿度と保ちつつ作物を栽培することができました。マルチは徐々に分解されていき、土に還りました。

しかし、予想外のことも起りました。まずコガネムシの幼虫が大繁殖しました。マルチの脇からポロポロ幼虫が溢れでてくるくらい大量でした。近隣に腐食がなかったので積層マルチに集中して卵を産んだのでしょう。コガネムシの幼虫は植物質のマルチを分解して糞として肥料を提供してくれるため歓迎できるものでした。

しかし、それ以上にやっかいな問題が起きました。それは…ナメクジの大繁殖です。

元々除草がされ土壌が露出されておりナメクジにとって心地良い場所ではありませんでした。しかし積層マルチという、常に湿った環境ができた結果、そこにナメクジが住みつき、大量発生したのです。生態系の貧弱な庭ではナメクジを餌にするような小動物はいません。そのため思う存分繁殖できたのでしょう。

そして夜や雨の日には地表に出て作物を食べ荒します。梅雨の時期にブロッコリーの茎や蕾に大量に張り付いているナメクジの大群を見たときの衝撃は今でも忘れられません。殺生は好きではないのですが、仕方なく、畝脇に穴を掘り、そこにペットボトルの底部分を埋めてビールを入れておくビールトラップを仕掛けました。一晩置いた結果は…これまた予想を越えるナメクジが溺死していました(想像してはいけません)。おかげで多少はナメクジの数は減ったように思えます。その後大規模な積層マルチにはチャレンジしていません。

現在、我が家の庭にはプラ舟を埋め込んで、池のようにしています。そこに隣の田んぼから訪れた蛙が住みついて周囲の虫やナメクジたちを食べてくれることを期待しています。おかげさまで、昨年の夏我が家の庭にいたカエル達は常にお腹がパンパンでした。

この出来事で学んだことは、例え積層マルチのような有名な実践でも、結果として何をもたらすのかを良い面も悪い面も含めて想像しておくとよいということです。また、その場をよく観察し適切な働きかけをしていくことの重要性に気づかされました。私は土の中だけに目が向いていましたが、土の外の世界のバランスも重要だったのです。視点を広げつつ、今やるべきことに集中しつつ、これからもデザインと実践を繰り返して学んで行きたいと思います。

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